あなたの前には2つの道があります。
ひとつは未知のブルーオーシャンへと続く、険しく果てしない道。もうひとつは多くの人が通った、安全でなだらかな道です。
あなたはどちらを選ぶでしょうか。険しい道を選ぶでしょうか。大きなリスクを抱えて・・・大勢の仲間や大切な人々の未来を背負って・・・
今回ご講演をいただいたのは、リゾートトラスト株式会社の太田泰紀氏。昨年7月以来のご登壇です。
会員制リゾートホテルとして業界のトップランナーであり続ける同社が、近年注力しているのがメディカル事業。グループ30社のうち、多くはメディカル事業であり、全国にすでに26ヵ所もの施設を開設しています。
メディカル事業を立ち上げたのは1994年のこと。
「リゾートでくつろぎ、好きなものを食べ、うまい酒を飲みながら、快適な環境と最先端技術で苦痛を感じることなく、早期に病気を発見できる検診をうけたい」という会員様の声をきっかけに、会員制メディカルクラブ「ハイメディック山中湖」を開業しました。
創業から20年。すでに会員制リゾートホテルとして売上第1位を記録し、確固たる地位を確立していた同社が選んだ「厳しく果てしない道」・・・それがメディカル事業への参入でした。
卓越した戦略があったのでしょうか?本当に勝算はあったのでしょうか?・・・
顧客の属性、ホテル業で培われたノウハウなどを考慮すれば、「ホスピタリティと快適性の提供」「カストマイズされたケア」「ウェルネスとリラクゼーションの融合」など、実現する上での優位性はあるかもしれません。
反面、メディカル分野の規制による厳格な法律や規制の問題、専門的な医療保険やメディカルエキスパートの確保、莫大な設備投資など、参入の障壁は高く厚く、課題は山積みだったはずです。
事実、1994年に「ハイメディック山中湖」を立ち上げてから11年間は苦労の連続だったと言います。顧客のニーズに応えながら採算のとれるビジネスモデルを構築できずに苦しみました。
突破口となったのは、医学会で独自の検診システムが評価されたこと。
超音波検査や血液検査に加えて、「PET(陽電子放出断層撮影)」「CT(コンピューター断層撮影)」などの画像診断を用いた検査を取り入れた検診システムは、世界一小さなガンを「早期に」「全身を一度に」診ることができる『山中湖方式』として世界的に注目されるようになったのです。
以来、徐々に軌道に乗り、現在では26ヵ所の施設を開設するまでに成長したメディカル事業ですが、(少し前の疑問に戻りますが・・・)本当に勝算はあったのでしょうか?
「メディカルの分野に参入する時に、社内の反発とかなかったのですか?」と太田氏に意地悪な質問をぶつけてみると「まあ、そこはオーナー社長の言うことですから・・・」と笑顔で煙に巻かれてしまいました。
真相は私たちにはわかりませんが、これほどのリスクを負っての決断の裏には、決意や覚悟からマーケティングや経営戦略まで奥深い背景があったに違いありません。そしてそのトップの決断を、長年培われてきた経験やノウハウ、大切に育んできた社風や理念に共感する社員や仲間たちが大きな推進力となって後押ししたからこそ実現できたのでしょう。
メディカル事業の立ち上げ後も、コロナによる苦しい時期を乗り越えてきた同社。心の支えになったのはやはり原理原則であり、経営理念だったようです。
<経営理念>
私たちリゾートトラストグループは 新天地開拓を企業精神として 「信頼と挑戦」「ハイセンス・ハイクオリティ」「エクセレントホスピタリティ」を追求し お客様のしなやかな生き方に貢献します。
<ブランドアイデンティティ>
ご一緒します、いい人生 より豊かで、しあわせな時(とき)を創造します
迷ったとき、困ったときに原点に立ち返ることによって解を見出し、確信から新たな活力を生み出す。そういえば、メディカルへの参入もお客様の声から生まれたものでしたね。まさに同社の原点です。
今後は、人生100年時代の健康長寿の実現を目指し、がんで大切な人を亡くさない社会をつくりたい。最先端の医療・介護サービスを創造する日本で磨いたビジネスモデルを世界へ発信したいと語る太田氏。
日本ならではのホスピタリティと介護・医療分野におけるクリエイティビティが世界を席巻する日も近いのかもしれません。
【最後に・・・】
今回も過去の講演で得た学びや気づきを反映したプレゼンをしていただき、会員一同とても感動し、事務局としても大変うれしく思いました。氏は公言なさいませんが、毎回の講演を社内でシェアし、自身は折に触れてメモを振り返り学ばれているとのこと。日々の努力によって他者の経験や叡智が血となり肉となることをあらためて学びました。