もしも、あなたが老後資金や将来への備えのために投資をするとしたら、そのお金はどのような会社に託したいでしょうか。
高い利益を追求する会社でしょうか。それとも、働く人や地域社会、未来の世代を大切にする会社でしょうか。
私たちが日々使うお金には、社会をより良い方向へ変える力があります。今回の講演では、鎌倉投信株式会社 代表取締役社長の鎌田恭幸氏より、「これからの時代に成長する『いい会社』の条件~次世代リーダーに求められる経営の視点~」をテーマにご講演いただきました。
鎌倉投信は、「投資はまごころであり、金融はまごころの循環である」という独自の投資哲学を掲げる運用会社です。短期的な利益だけではなく、事業性と社会性を兼ね備えた「いい会社」に長期投資を行うことで知られています。代表的な投資信託である「結い2101」は、投資先企業への継続的な対話や現場訪問を重視し、投資家と企業、社会をつなぐ独自の運用スタイルを実践しています。
鎌田氏は、「いい会社」とは、社員とその家族、取引先、地域社会、自然環境、顧客、そして株主を大切にしながら、持続的で豊かな社会の実現を目指している会社であると語りました。こうした考え方は設立当初には必ずしも理解されず、業界内外から厳しい批判を受けることもあったそうです。しかし氏は、「業界の常識や社会の常識から新たな価値は生まれない」と信じ、理念を貫いてきました。
創業からしばらくは赤字経営が続きましたが、その苦しい時期を支えたのは顧客との信頼関係でした。特に東日本大震災の際には、多くの解約が発生すると覚悟していたにもかかわらず、逆に過去最大規模の入金があったといいます。顧客から寄せられた励ましの言葉や手紙は、「信こそが貨幣である」という鎌田氏の確信をより強いものにしました。
講演では、鎌倉投信が考える「投資の果実」についても紹介されました。投資の目的は単なる資産形成だけではなく、社会形成、そして心の形成にもあるといいます。リターンやリスクだけでなく、「社会」「未来」「自分らしさ」という第三の軸を持つことが、これからの投資には求められるとのお話は非常に印象的でした。
後半では、企業経営を取り巻く環境変化についても言及されました。不確実性の高まり、インフレ構造への転換、人手不足の深刻化、そしてAIによる産業構造の変化など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。その中で経営者に求められるのは、量的拡大を追い求めることではなく、付加価値生産性を高め、働く環境の質を向上させることで持続的な成長を実現することだと語られました。
また、今後の経営に不可欠な要素として、自社の存在目的に深く根差した経営と、自社の商品・サービスが生み出す価値の再定義を挙げられました。「モノやサービスを売る」のではなく、「社会価値を共創する」という視点への転換は、多くの「暁の会」会員にとって大きな学びとなったのではないでしょうか。
講演の最後には、リーダーシップや人生観についても語られました。リーダーシップとは役職や権限ではなく、一人の人間としてどのように生きるかを示すこと。そして人生の目的は幸福になることであり、人は人を幸せにすることでしか本当の幸福を得られないという言葉が心に残りました。
本講演を通じて強く感じたのは、経営も投資も単なる利益追求の手段ではなく、人と人との信頼や志によって成り立つ営みであるということです。変化が激しく先行きが見通しにくい時代だからこそ、自社の存在意義を問い続け、社会に必要とされる価値を創り出すことの重要性を改めて考えさせられる、大変貴重な講演となりました。








